ギフテッドとは?10人に1人が隠れた天才の可能性も

By パロアルトインサイトスタッフ
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ギフテッドとは?10人に1人が隠れた天才の可能性も

みなさんは「ギフテッド」という言葉をご存知でしょうか?聞いたことはあっても、どういう人たちのことを指しているのか分からない人も多いのではないでしょうか。先日、文部科学省が「ギフテッド」と呼ばれる突出した才能を持つ子どもが円滑な学校生活を送れるように来年度から支援に乗り出すと発表し、注目を集めています。

■ギフテッドの定義とは

どんな才能を持つ人を「ギフテッド」と定義するのでしょうか。実は、まだ世界的に統一された定義は存在しません。ギフテッドの先進であるアメリカでは「初等中等教育法、落ちこぼれ防止法」に記載されていますが、それによると以下のように定義されています。

ギフテッドとは、知性、創造性、芸術性、リーダーシップ性、または特定の学問で偉業を成し遂げる能力がある個人を指す。また、その能力を開花させるために特別なサポートを必要としている個人を指す

ギフテッドにおける高度な知的能力と精神性というものは、誕生から生涯にかけて見られます。生まれ持った高い知性や芸術性、深い洞察力などの、豊かな精神性は環境に依存することなく兼ね備えており、必ずしも学習能力が高いとは限りません。しかし、欧米や日本ではいずれもIQ検査により発見されるケースが多いです。

海外では、アインシュタイン、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグなどの超著名人も皆、ギフテッドといわれ、これまでに多くのイノベーションを起こしてきました。このように飛び抜けた能力を持つ「ギフテッド」と呼ばれる天才たちは世界に広く存在しています。日本にも知られていない多くのギフテッドがいると言われています。

■アメリカのギフテッド教育とは

ギフテッド教育の最先端の地であるアメリカでは、ギフテッド・チルドレンを発掘し、育成し、社会での認識を高め価値を広めていくさまざまな組織が存在しており、社会で全体でギフテッド教育を支援していく環境にしていこうという動きになっています。アメリカの公教育システムは住む地域によって学力差が大きいのも特徴ですが、良い学区の公立学校であれば、ハーバードやスタンフォードなどの有名大学に入ることも珍しいことではありません。日本の有名大学の入学者の多くが私立、国立の学校からということを考えると異なるポイントです。そんなアメリカの教育システムで注目すべき2つのスクールの形式を紹介いたします。

マグネットスクール

生徒数が多く、ギフテッドの生徒も多い大きな学校区では、理数・医学・アートなどの特定の分野の学習に重点を置いた学校「マグネットスクール」を設けています。魅力あるプログラムによって、磁石が鉄を引き付けるように子どもを引き付けるということから名付けられた学校システムで、各公立学校単位で自分の学校を特色化する選択ができるようになっています。そのため、少しでも良い学区に住んで、高い税金を払ってでも良い公立の学校へ子供を通わせる選択をする親も非常に多くなっています。

チャータースクール

ここ1990年ごろからアメリカの公立校の間で新しい学校の形「チャータースクール」が誕生しました。チャーター=特別認可を受けて開校する、新しいタイプの公立学校のことで、教師や父母など、学校の開設を希望する個人や団体がプランを準備し、州によって規定が異なるチャーター交付権限を持つ機関の審査を通ると、自分たちの手で学校を開校・運営することができる。公立学校であるため、生徒数に応じた運営資金が州から支給され、通常の公立校のような州政府が定める教育規定にとらわれることがありません。

■日本のギフテッド教育

アメリカなどギフテッドのための教育が進んでいる国と比較した際に、日本は、ギフテッドへの支援教育がほとんどなく、理解が浅いままでした。結果として、日本式の横並びの教育に馴染めなかった能力の高い学生が、海外へと流出しているという現状になっています。その動きに危機感を覚えたのか、ようやく国として文部科学省が動き出しました。

まだまだ国としての浸透が浅い日本でのギフテッドですが、いち早く取り組んでいる自治体もあります。渋谷区では、日本ではいち早く2017年よりギフテッド教育に取り組んでいます。このプロジェクトの特徴は、プログラムの内容開発に「異才発掘プロジェクトROCKET」(現在は、LEARNに改称)を提供する東京大学先端科学技術研究センターが協力しております。

その他にも中野区にある「翔和学園」では、日本の社会においてその突出した良さを、社会的成功につなげることが難しく苦しんでいる子どもたちへのアプローチをしていくことを目的としてギフテッドクラスを設けているなどの動きがあります。アメリカと比較するとまだまだですが、意識が浸透し、日本でも徐々に動きが広まってきています。

■終わりに

10人に1人がギフテッドの子どもともいわれており、30人の教室の中にだけで見ても3人のギフテッドの子どもがいるということになります。残念ながら親が気づかなければ、特別なものを持っていようとも一生普通の人です。子どもたちが成長していくための適切なサポートを提供するには、まず第一に大人が子供たちの能力に気づく必要があります。ギフテッドを見出すのは非常に難しいとされていますが、日本でも国としてギフテッド支援の機運が高まっているので、今後はギフテッドの概念が浸透していき、これまでのように埋もれるということも少なくなっていくと考えられます。

また、誰しもがギフテッドかどうかに限らず、他者よりも得意なことや、夢中になれることがあると思います。一人ひとりがこの機会に改めて自分自身の個性や才能に目を向くようになるとまた違った面白いシナジーが生まれるかも知れませんね。